MEMORY
IDEA 1
トランジションには、その人の傾向が顕著に表れる、と最近考えています。
トランジション(transition)は、広辞苑によると「ビデオ・映画などで、シーンが変わる際の画面の切換え効果」と書かれていますが、
ここから派生して、ビジネスでは「役職や役割、責任範囲が変わる際のキャリアの移行時期」と言えると思います。
金融業界であれば、他の支店に異動する。商社であれば、海外に駐在する。グループ会社であれば、子会社に出向する。
そういったケースが、トランジションに当てはまります。
トランジションは、新しい環境に身を投じることでもあるので、
いわばゼロベースで、人との関わり方を築く、環境をつくるということでもあります。
そして、そういう状況では、その人の価値観が顕著に表れるように感じます。
言い換えれば、誰も知らない集団の中に入ったとき、人は自分の価値観に基づき行動する、ということです。
これは、一歩引いて考えたら、当たり前のように思います。
自分以外の誰も知らない集団の中に入ったら、何が正しくて、何が間違っているのか、評価・判断ができないからです。
そうすると、これまでの自分の経験をもとに判断するしかありません。
それはつまり、自分の価値観をもとに行動する、ということになります。
トランジションにおいて、例えば、
間違えないこと、正確さといったことを大事にしていたら、まずは状況把握すべく、様子見というスタンスを取るかもしれません。
また影響力やスピードを大事にしていたら、まずはメッセージを発信したり、積極的に問題に介入して解決する、という行動を取るかもしれません。
留意すべきなのは、どのような言動を取るにしろ、メリットとデメリットが表裏一体にある、ということです。
正確さを意識していたら、周りからは「スピード感がない」と言われるかもしれませんし、
まずは行動ということでメッセージ発信をしたら、周囲とのハレーションが起こるかもしれません。
またトランジションは、受け入れる組織からすると、
人が代わる、つまり組織が不安定な状態になる、ということと同義なので、
組織にいるメンバーは、否定的に捉える傾向があると思います。
トップの交代であれば、組織への影響力も大きいことから、尚更でしょう。
トップでなくとも、役職が高いと、現場まで階層がいくつか連なることが多いと思うので、
自分が発信したメッセージがゆがんで伝わり、否定的な受け取り方をされることもあると思います。
そういった側面を踏まえると、
トランジションでは、ネガティブな影響力(自分が意図しない影響)をどれだけ早く察知できるかが、欠かせません。
そういった情報が上がってくるように、いかに周囲と関係性が築けるか。
トランジションの肝は、人との関係性の築き方にあるように思います。
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【参考文献】
新村出「広辞苑 第七版」, 岩波書店, 2018年1月12日