MEMORY

2025-01-05 09:30:00

IDEA 1

トランジションには、その人の傾向が顕著に表れる、と最近考えています。

 

トランジション(transition)は、広辞苑によると「ビデオ・映画などで、シーンが変わる際の画面の切換え効果」と書かれていますが、

ここから派生して、ビジネスでは「役職や役割、責任範囲が変わる際のキャリアの移行時期」と言えると思います。

 

金融業界であれば、他の支店に異動する。商社であれば、海外に駐在する。グループ会社であれば、子会社に出向する。

そういったケースが、トランジションに当てはまります。

 

トランジションは、新しい環境に身を投じることでもあるので、

いわばゼロベースで、人との関わり方を築く、環境をつくるということでもあります

そして、そういう状況では、その人の価値観が顕著に表れるように感じます。

言い換えれば、誰も知らない集団の中に入ったとき、人は自分の価値観に基づき行動する、ということです。

これは、一歩引いて考えたら、当たり前のように思います。

自分以外の誰も知らない集団の中に入ったら、何が正しくて、何が間違っているのか、評価・判断ができないからです。

そうすると、これまでの自分の経験をもとに判断するしかありません。

それはつまり、自分の価値観をもとに行動する、ということになります。

 

トランジションにおいて、例えば、

間違えないこと、正確さといったことを大事にしていたら、まずは状況把握すべく、様子見というスタンスを取るかもしれません。

また影響力やスピードを大事にしていたら、まずはメッセージを発信したり、積極的に問題に介入して解決する、という行動を取るかもしれません。 

 

留意すべきなのは、どのような言動を取るにしろ、メリットとデメリットが表裏一体にある、ということです。

正確さを意識していたら、周りからは「スピード感がない」と言われるかもしれませんし、

まずは行動ということでメッセージ発信をしたら、周囲とのハレーションが起こるかもしれません。

 

またトランジションは、受け入れる組織からすると

人が代わる、つまり組織が不安定な状態になる、ということと同義なので、

組織にいるメンバーは、否定的に捉える傾向があると思います。

トップの交代であれば、組織への影響力も大きいことから、尚更でしょう。

トップでなくとも、役職が高いと、現場まで階層がいくつか連なることが多いと思うので、

自分が発信したメッセージがゆがんで伝わり、否定的な受け取り方をされることもあると思います。

 

そういった側面を踏まえると、

トランジションでは、ネガティブな影響力(自分が意図しない影響)をどれだけ早く察知できるかが、欠かせません

そういった情報が上がってくるように、いかに周囲と関係性が築けるか。

トランジションの肝は、人との関係性の築き方にあるように思います。


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【参考文献】

新村出「広辞苑 第七版」, 岩波書店, 2018年1月12日