MEMORY
IDEA 2
1on1を上司と部下で行うのであれば、上司にも第三者の聞き手が必要かもしれない、そんな風に最近思います。
1on1は、もともとはグーグル、マイクロソフトなどのシリコンバレーにある企業が、
Face to Faceのコミュニケーションを1対1で実施したことをきっかけに、生まれた言葉だと言われています。
日本では、2012年にヤフー(現LINEヤフー)が1on1ミーティングを導入し、その頃から、あらゆる企業に広がっていきました。
今の1on1は、上司と部下という関係性に閉じず、部署を超えて行われていたり、
またコロナ禍もあって、対面でもオンラインでも、形式を問わなくなっていることから、
個別に1対1のコミュニケーションを行う、というミーティングの形態を表す言葉になっているかもしれません。
そのため、進捗共有や人事評価、キャリア相談を目的としたものもあれば、
人材育成を目的として、コーチングやメンタリングが行われることもあります。
ただ、いずれの目的であったとしても、相手の話を聞くということは欠かせない、と考えています。
(相手の話を聞かないなら、それはミーティングというより、指導とか指示・命令といった別のものかと)
では、相手の話を聞くと、どうなるのか。
臨床心理士の東畑開人さんは、著書「雨の日の心理学」にて「話をきくことでおかしな関係になる」と伝えています。
皆さんにも経験があるのではないでしょうか。
相談を受けて、いろいろと話をきいている。頼りにされていると思っていたのに、ある日突然相手との関係が変になっていたことに気づく。
恋愛感情を向けられていることもあるでしょうし、深い憎しみを向けられていることもあるでしょう。
すさまじい軽蔑を受けていることだってあるかもしれません。
とにかくおかしくなっている。
東畑さんは、精神分析の観点から「転移と逆転移の理論」をもとに、上記の現象をわかりやすく説明されていますが、
端的に言えば「僕らの人間関係というものが、過去の繰り返しである」と伝えています。
毎回同じような理由で人と揉める。別れる。
同じようなことで自分が傷ついたり、相手を傷つけてしまう。
そのような経験が、あなたにもあるかもしれません。
上司と部下との1on1においても、そのようなことが起こり得ます。
「どんな上司も、結局は数字しか見ていない」とか、「上司に相談をしても、面倒くさいと思われるだけ」とか、
部下にとっての「上司とは、○○である」という思い込みや捉え方が、上司と部下との関係性を定義づけてしまう。
上司としても「自分は信用されていないな」とか、「本音を話してくれないな」と内心では思ってしまって、
部下との関わりを諦めてしまう。
もしこのような状況になってしまい、それを変えようと思ったら、
上司と部下のどちらかが、関係性を変えようと試みる必要があります。
ただ、関係性を変えるというのは、とてもエネルギーがいることです。
本音を話してくれない相手に、本音を話してもらえるように根気強く関わる。
自分が信用されていなくても、まずは自分から相手を信用する。
言葉で表現するのは簡単ですが、これを実践し、続けようとすると、胆力が問われると思います。
そうすると、どうしても余裕がなくなると言いますか、我慢する、ストレスが溜まる状態になることから、
そのストレスを一緒に受け取る、余裕をともにつくる存在が必要になると思います。
これが、冒頭に記載した「第三者の聞き手」です。
この聞き手は、カウンセラー、コーチ、メンター、アドバイザーなど、どのような役割の方でもいいと思います。
むしろ同僚でも、先輩でも、社長でも、家族でも。
ストレスをともに受け取ってくれる相手であれば、役割は関係ないかもしれません。
そんな聞き手がいるからこそ、自分が自分でいられる。だからこそ、相手と向き合える。
人には人が必要なんだと、つくづく思います。
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【参考文献】
本間浩輔「ヤフーの1on1―部下を成長させるコミュニケーションの技法」, ダイヤモンド社, 2017年3月25日
東畑開人「雨の日の心理学」, 角川書店, 2024年9月2日