MEMORY
STORY 6
あなたのやりたいことは、何ですか?
そう問われても、
「やりたいことが、わからない」と答える人は、多いかもしれません。
情報が溢れ、自分以外の他者からの情報に意識が向きやすく、
また、目の前のことを片付けたとしても、やることが次々に迫りくる変化の激しい現代では、
一旦立ち止まり、自分に意識を向けて、
そのようなことを考える時間が少ないのだろう、と思います。
そういうときは、逆説的なアプローチにはなりますが、
やりたくないことから明確にしてみると良いかもしれません。
なぜなら、やりたくないことは、やりたいことに比べて、考えやすいからです。
これには、人間の生存本能が関わっている、と思います。
危機回避能力と言い換えても良いかもしれませんが、
生物には、自分の命を長らえさせるために、不安や恐怖、抵抗といった感情があります。
そのようなネガティブな感情は、嬉しい、楽しいといったポジティブな感情よりも、自分の意識が向きやすいことから、
やりたくないこと(ネガティブなこと)は、やりたいこと(ポジティブなこと)に比べて、
考えやすいのだろう、と思います。
私の個人的な体験としても、
やりたいことは、すぐに答えられないけれど、
やりたくないことなら、いくらでも答えられる、という人に多く出会いました。
あなたは、どうでしょうか?
また、やりたいことを答えられたとします。
その後、その答えに対して、
それは、本当に「あなた」が、やりたいことですか?
と問われると、どうでしょう。
というのも、やりたいことは、世間体の影響を受けながら考えてしまうことが多いように感じます。
例えば、お金持ちになりたい、○○大学に行きたい、○○という役職に就きたいなどの、
よく耳にするようなやりたいことは、
家族や会社からの期待、世間体、一般常識などに影響を受け、
それを自分がやりたいことだと勘違いしている場合が、あるかもしれません。
もちろん、そのこと自体が悪いことだとは思いませんが、
自分以外の他のものを軸にして、やりたいことを決めてしまうと、それに自分が依存せざるを得なくなる、ということは、
念頭に置いておいた方が良いかもしれません。
また、本当に「自分が」やりたいことでないと、
やりたいことに向けて、困難に直面したとき、
それを乗り越えるためのエネルギーが、湧かなくなることもあるでしょう。
もしこの文章を読んで、
いまのやりたいことに対し、少し違和感を持ったなら、
それは、本当に「自分」が、やりたいことなのか?
と改めて問い直してみても、良いかもしれません。
その他に、やりたくないことから明確にするメリットとして、
やりたいことには、やりたくないことが含まれている、という側面があります。
例えば、「自分の会社を大きくする」ということが、やりたいことだったとして、
そのためには、「自分が嫌いなお客さんと取引する」ということもあるでしょう。
そのようなときは、やりたいことに向かっているはずなのに、やりたくないことをやっている、
という葛藤を抱えることになります。
これは、ある意味、当然のことなのかもしれません。
自分を取り巻く環境は、刻一刻と変化しますし、
自分の状態も、一日一日と変わります。
けれども、
「そのような葛藤や苦悩が、やりたいことのためには起き得る」ということが、
事前にわかっていれば、それに向けた心構えができるので、
実際に起こった葛藤や苦悩を乗り越えやすくなるのだろう、と思います。
※私自身は、これを「やりたいことを引き寄せるために、篩(ふるい)にかけられている」と捉えています
このプロセスを経るからこそ、やりたいことのための覚悟が育つのかもしれません
やりたくないことを明確にするために、まずは、
いま、この瞬間、人生から消し去りたい嫌なことを
できるだけ多く、紙に書いてみてください。
ポイントは、
頭で考えるのではなく、身体で感じたことをそのままに、
手を休めず、手に考えさせるような気持ちで、できるだけ多く書く、
ということです。
やりたくないことは、
頭で考える、理性的に捉える前から、
感覚的に、感情的にやりたくないものです。
考えること、理性的に・論理的に捉えることは、
書き出した後からでもできるので、
まずは、書いてみる、そこから一緒にやってみましょう。
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【参考文献】
神田昌典「非常識な成功法則」, フォレスト出版, 2008年12月1日